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ドリル問題、まだその次元ですか?

――顧客価値駆動型開発という思考の階層

「ドリルを売るのではなく、穴を売れ」という言葉は、

マーケティングや価値提案の文脈で繰り返し引用されてきました。

製品そのものではなく、顧客が得たい結果に着目せよ、

という示唆に富む視点です。


しかし、顧客価値駆動型開発の立場から見ると、この言葉は出発点にすぎません。


本当に顧客は「穴」を必要としているのでしょうか。

ここを問い直すことが、これからの開発や経営において決定的に重要になります。


顧客がドリルを買う理由は、壁に穴を開けたいからだ、

と説明されることが多いでしょう。

では、その穴は何のために必要なのか。

棚を取り付けたいのか、配線を通したいのか、あるいは空間を区切りたいのか。

さらに言えば、その棚には何を置きたいのか、

その配線はどんな体験を実現したいのか。


顧客価値駆動型開発では、

この「なぜ」を何層にもわたって掘り下げていきます。

価値とは、モノや機能に内在するものではなく、

顧客の文脈の中で初めて立ち上がるものだからです。


多くの企業は、「穴=機能」まで掘り下げた段階で思考を止めてしまいます。

その結果、より高性能なドリル、より正確な穴、より速く開く穴

といった改善競争に陥ります。


それ自体は無意味ではありませんが、

顧客価値の本質に迫っているとは言い切れません。


顧客が本当に求めているのが

「安心して使える収納空間」や「生活動線の改善」、

「作業時間の短縮」だとしたら、穴を開けるという行為そのものが

不要になる可能性すらあります。


接着式の棚、既存構造を活かした設計、

あるいは、そもそも棚に載せる物を持たないという選択肢も、

顧客の価値を満たし得るのです。


ここで重要になるのが、問題空間と解空間を分けて考えるという視点です。


「穴を開けるドリル」は解空間の発想です。

一方、「生活の中で何を実現したいのか」「どんな不便や不安を解消したいのか」は問題空間に属します。


顧客価値駆動型開発では、

解を求めることを急がず、問題空間にとどまり続ける勇気が求められます。

このプロセスを省略すると、どれだけ技術的に優れた製品であっても、

顧客にとっての価値は限定的なものになります。


また、顧客自身が自分の価値を言語化できていない場合も少なくありません。

「穴が欲しい」と言われたとき、それをそのまま要件として受け取るのか、

それとも背景にある意図や制約、感情にまで踏み込むのかで、

開発の方向性は大きく変わります。


顧客の言葉を鵜呑みにするのではなく、

対話を通じて価値を共創していく姿勢が不可欠です。


これは単なるヒアリング技術の問題ではなく、

設計思想や組織文化に深く関わるテーマです。

顧客価値を深掘りするという行為は、

結果として企業側の意思決定の質を高めます。


どの機能に投資すべきか、どこで差別化すべきか、どのリスクを取るべきか。

その時の判断軸が「顧客は本当は何を必要としているのか」

という問いに根ざしていれば、

短期的な流行や競合動向に振り回されにくくなります。

逆に言えば、この問いが曖昧なままでは、DXや生成AIといった手段も、

単なる効率化やコスト削減にとどまり、顧客価値の創出にはつながりません。


「穴を売る」という発想をさらに一段深め、

「穴の先にある価値は何か」を問い続けることが

顧客価値駆動型開発の核心です。

この問いは一度答えを出せば終わりではなく、

顧客や環境の変化とともに更新され続けるものでもあります。

だからこそ、体系だった思考プロセスと、組織としての実践力が求められます。


ミームテック技術士事務所では、

顧客価値を起点に、問題空間の構造化、設計判断の明確化、

そして開発・経営への落とし込みまでを一貫して支援しています。

「ドリル」や「穴」にとどまらない、本質的な価値創出に取り組みたいと

お考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

顧客価値駆動型開発を、

理念ではなく実践として、貴社に根付かせるお手伝いをいたします。

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