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なぜペーパーレス化が進まないのか

「社長、また申請書の印鑑が足りないって総務から電話です」

「え、昨日ハンコ押したよ。どこ行ったんだ?」

「たぶん旧版のフォーマットで出し直しになってます」

 

朝の会議前、そんなやりとりを聞きながら、

社長は小さくため息をつきました。

DX推進会議で「来期こそペーパーレス化を」と宣言してから、もう半年。

クラウドストレージを導入し、電子承認システムも試験運用を始めました。

それでも、なぜか紙が減らないのです。

印刷機のトナーの減りは相変わらずだし、

机の上には結局、書類の束が積まれていきます。

 

 現場からは「使いにくい」「結局紙のほうが早い」といった声が上がり、

社内に漂う空気はどこか白けています。


 社長は思う。「これ、うちだけが抱えている問題じゃないな?」と。

 

 実際、多くの中小企業が同じ壁にぶつかっています。

 ペーパーレス化の本質は「紙を減らすこと」ではなく、

「情報の流れを変えること」です。

ですが、多くの取り組みではこの視点が抜け落ちています。

 

 たとえば、請求書のやりとりを電子化する場合、

紙で回していたときの「確認」「印鑑」「控え」の意味を理解しないまま、

単にPDFに置き換えると、どこかで不具合が出ることになります。

結局、誰かが印刷して確認します。


紙が消えないのは、紙そのものが悪いのではなく、

情報の受け渡し方の前提が変わっていないからなのです。

 

つまり、ペーパーレス化が進まない理由は

「ツールの導入では解決しない構造的な課題」があるからなのです。

 

紙の裏には、社内の意思決定の流れ、責任の所在、安心感、

そして「これまでのやり方で問題なかった」という経験があります。


この文化の層を理解せずにツールだけを変えても、変革は定着しません。

だからこそ、「どうすれば紙がなくせるか」ではなく、

「なぜ紙が使われてきたのか」を掘り下げる必要があるのです。

 

そのために有効なのが、

顧客価値駆動型開発 / CVDD(Customer Value Driven Development)です。


CVDDでは、単なる業務効率化ではなく、「価値の流れ」に着目します。


紙のやり取りがなくならないのは、そのプロセスのどこかで、

誰かにとっての“安心”や“確認の証拠”という価値があるからです。

つまり、紙を捨てることは、そうした価値を失うことにもなりかねません。

だからこそ、置き換えるには新しい価値を設計しなければならないのです。

 

ある製造業の事例では、

図面の承認プロセスを電子化する際、単にデジタル承認に移行するのではなく、「承認後に誰が何を確認したか」が可視化されるダッシュボードを設けました。

紙のハンコが持っていた“責任の証”を、

デジタル上で“透明性”という新しい価値に変換したのです。

こうした設計思想こそが、CVDD的アプローチです。

 

ペーパーレス化を単なるIT導入として進めると、

「現場の負担が増える」「成果が見えない」といった不満が

蓄積しやすくなります。


CVDDの考え方を取り入れれば、

目的が「紙をなくすこと」から「価値を再構築すること」に変わります。

そのとき、現場の視点も変わり始めます。

「これは何のためにある仕組みか」

「誰の価値を守るための工程か」を議論できるようになるのです。

 

ペーパーレス化はDXの入り口であり、同時に企業文化の鏡でもあるのです。

紙に残っているのは“古い習慣”ではなく、“人の安心”なのです。

だからこそ、焦らず丁寧に、その安心を別の形で再設計することが大切だ。

 

ミームテック技術士事務所では、

こうした「技術導入と価値設計をつなぐ支援」を行っています。

ペーパーレス化を本当に定着させたい経営者の方、

現場の納得感と業務設計を両立したい方は、

ぜひ一度お問い合せください。

経営の悩みを、共に言語化し、次の一歩へとつなげていきます。


エージェントAI・Masaもご質問をお待ちしております

 
 
 

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