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CVDDと顧客価値センス(第1回)

製造業をはじめとする多くの業界において、

「顧客価値」という言葉が以前にも増して強調されるようになってきました。


しかし、その意味するところは

単なる「顧客満足」や「品質の良さ」に留まらないと考えます。


むしろ、顧客が潜在的に望んでいる体験や成果を先取りし、

それを具現化していくことが求められているのではないでしょうか。


このとき重要になるのが、

感覚的・直観的な洞察から成る「顧客価値センス」と、

それを実際の開発プロセスに組み込み推進する

「顧客価値駆動型開発」の体系だと考えます。


「顧客価値センス」と「顧客価値駆動型開発」の両者は

対立するものではなく、相互に不可欠な関係を持ち、

共に企業の競争力の根幹を成すと位置付けられます。


顧客価値センスとは、

定量的な市場調査や既存の顧客インタビューだけでは掬いきれない、

微妙なニーズやまだ言葉にならない期待を捉える力です。

顧客の発言の背後にある文脈や感情を読み取り、

「なぜその不便さが気になるのか」「どんな状況で心地よさが生まれるのか」といった深層の要因を感知するセンスです。


このセンスは、

必ずしも高度な分析手法や複雑なデータ処理から生まれるのではなく、

現場での観察や共感を通して磨かれる部分が大きいのが特徴です。

熟練の職人が顧客の一言から改良の余地を嗅ぎ取るように、

経営者や開発者が

「この方向に価値の可能性がある」と感じ取る直感こそが

顧客価値センスに他なりません。


一方で、センスだけでは価値を形にすることはできません。

直観はときに偏りや思い込みを伴い、

感覚だけで意思決定を進めればリスクを高めます。

そこで求められるのが「顧客価値駆動型開発」という枠組みです。

これは、センスによって芽生えた氣づきを確かなプロセスに落とし込み、

設計・検証・展開を通じて顧客価値を確実に提供できるようにする方法論です。


システムズエンジニアリングの考え方を基盤に、

問題空間を丁寧に定義し、解空間で複数の代替案を探索し、

顧客やステークホルダーとの対話を重ねながら

最適解を絞り込んでいく流れは、まさに「センスを実装する仕組み」といえます。


この二つの関係は、芸術家と技術者の関係にも似ています。

芸術家が直観的に「美しさ」を感じ取り、

その感覚を原動力に表現を模索するように、

企業は顧客価値センスを起点に新しい発想を得ます。


しかし、それを社会に受け入れられる製品やサービスにまで高めるには、

技術者の緻密な設計と検証が欠かせません。


顧客価値駆動型開発は、

センスで見出した曖昧な価値の種を、

組織全体で再現可能な成果に育て上げる道筋を提供します。


また、顧客価値センスと顧客価値駆動型開発の関係は、

経営戦略と現場実践を結びつけるブリッジでもあります。


経営者が市場動向や社会的潮流を読み取って

「これからはこの価値が重要になる」と感じても、

それが組織内に伝わり、具体的な開発活動に反映されなければ

単なる感想に留まってしまいます。


逆に、現場の開発チームが顧客インタビューや実証実験を通じて氣づきを得ても、

それが経営の意思決定と結びつかなければスケールさせることができません。

センスと駆動型開発を往復させることで、経営と現場が一体となり、

組織全体が顧客価値に向かって駆動していく仕組みが生まれます。


さらに、この関係性は人材育成にも直結します。

若手社員はデータやフレームワークを頼りに課題を分析する傾向がありますが、

そこに顧客価値センスを学ぶ機会が加わることで

「数値には表れない本質」を掴む力が養われます。


逆にベテラン社員が持つ直観や経験知は、

顧客価値駆動型開発のプロセスに組み込むことで形式知化され、

組織全体の財産となります。


こうしてセンスとプロセスが交差する場が、

企業文化そのものを「顧客価値に敏感であり続ける文化」に変えていきます。


近年、生成AIをはじめとする技術の進展によって、

情報分析や代替案の創出はますます容易になっています。

しかし、AIが導き出す選択肢の中から

「どれが本当に顧客に響くのか」を見極める最後の判断には、

やはり人間の顧客価値センスが欠かせません。

そしてそのセンスを裏打ちし、

リスクを制御し、組織として持続可能な形で活かすのが

顧客価値駆動型開発なのです。

AIが力を発揮するのは、

まさにこの二つの関係を補強する役割を担う場面であり、

人と技術の共創が企業価値を飛躍的に高める時代に入っているといえます。


総じていえば、顧客価値センスは「方向を指し示す羅針盤」であり、

顧客価値駆動型開発は「航路を確実に進むための航海術」です。


羅針盤だけでは進めませんし、航海術だけではどこへ行くのかが定まりません。

両者が揃って初めて、

企業は荒波の市場を越えて顧客とともに新たな価値の地平へと到達できるのです。


ミームテック技術士事務所は、

水先案内人として、この「顧客価値センス」と「顧客価値駆動型開発」を

つなぐ橋渡しを支援しています。

経営者が直感的に感じている価値の可能性を整理し、

システムズエンジニアリングの手法を活かして実装可能なプロセスへと導くこと、

そして現場が掴んだ気づきを経営戦略へ還流させることを得意としています。


貴社が顧客価値を軸に持続的な成長を実現するために、

ミームテック技術士事務所の知見と経験をぜひご活用ください。

お問い合せをお待ちしております。


エージェントAI・Masaへのご質問もお待ちしております

 
 
 

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