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CVDDと顧客価値センス(第2回)

顧客価値を起点とした事業づくりを実現するうえで、

忘れずにおきたいのは「顧客価値センス」を育てることなのです。


これは単なる市場調査やアンケート結果を分析する力とは異なり、

顧客自身がまだ明確に言語化できていない期待や違和感を

感じ取る感覚的な力です。

現場に立ち、顧客と触れ合い、

時には雑談の中から浮かび上がる小さなサインを

見逃さずに掬い上げる力と言ってもよいでしょう。


このセンスは、生まれ持った才能ではなく、

観察・共感・直観という三つの現場的な実践を積み重ねることで

磨かれていくと考えます。


まず「観察」です。

多くの企業が顧客調査を行っていますが、

その多くは顧客に質問を投げかけ、

回答を収集する形で終わってしまいます。

しかし、本当に大切なのは顧客がどのように行動しているかを

観察することです。

顧客が製品やサービスを使う現場に立ち会い、

実際の使い方を観ると、思いがけない発見があります。


例えば、工場の現場で導入した新しい設備を観察すると、

作業者が説明書通りに使わず、

自分なりに工夫して使っている場面に出会うことがあります。

それは単なる「手順違反=誤使用」ではなく、

作業者が本当に求めている価値へのヒントかもしれません。

観察によって、顧客が意識せずに表現しているニーズを発見できるのです。


次に「共感」です。

顧客の立場に身を置き、

その状況を自分事として感じることがセンスの源になります。

共感とは「顧客の言葉に耳を傾けること」だけではなく、

「顧客の置かれている状況を追体験すること」です。


たとえば、物流業界で配送スタッフに同行すると、

業務の効率性を数値で語るだけでは見えてこなかった苦労や

誇りに触れることができます。

その経験は、単なる数字の改善を超えて

「どのような改善が顧客にとって心地よいか」を想像する力を育てます。

共感は、顧客の声をデータ化する前に

「その場の温度感」を自分の中に蓄積する行為です。

この積み重ねが、後に顧客価値を判断するときの直観的な基準になります。


そして三つ目は「直観」です。

直観というと根拠が薄いものと思われがちですが、

実際には経験や観察の積み重ねから生まれる即時的な判断力です。


熟練の経営者やベテランの設計者が

「この仕様ではうまくいかない気がする」と感じるとき、

それは根拠のない勘ではなく、

過去に蓄積された観察と共感のデータベースが瞬時に結びついた結果です。

この直観がなければ、

まだ言葉になっていない顧客価値を早期に察知することはできません。

直観は一人の人間に閉じたものではなく、

チームで共有することでさらに洗練されます。

あるメンバーが直観した小さな違和感を、別のメンバーが補完することで、

より明確な顧客価値のシナリオが見えてきます。


この観察・共感・直観の三つの実践を通じて磨かれる顧客価値センスは、

経営や開発における意思決定の質を大きく高めます。


単なる調査データや過去の成功事例に依存していては、

変化の激しい市場の中で新しい価値を生み出すことは難しいからです。


顧客自身がまだ気づいていない価値の萌芽を感じ取れる組織こそが、

新しい市場を切り開くことができます。

そして、このセンスは経営者だけが持つものではなく、

現場の従業員一人ひとりが育んでいくものでもあります。


現場で小さな工夫を重ねる従業員の声や行動は、

顧客と同じように価値のヒントを含んでいます。

それを組織として拾い上げ、共有することができれば、

全体としての顧客価値センスは格段に強化されます。


さらに重要なのは、このセンスを開発のプロセスにどう接続するかです。


直観や共感によって得られた氣づきは、

時に曖昧で言葉にしにくいものです。

それを整理し、仮説として表現し、検証可能な形にしていくことで、

組織全体で活かせる知恵になります。


ここで求められるのが「顧客価値駆動型開発」の枠組みです。

センスによって掴んだ曖昧な価値を、

開発プロセスに乗せて形にしていく仕組みがなければ、

せっかくの気づきも個人の勘で終わってしまいます。

つまり、顧客価値センスは顧客価値駆動型開発の起点であり、

両者は不可分の関係にあるのです。


この視点に立てば、

企業の競争力は単に優れた技術や

効率的な生産体制から生まれるのではなく、

「どれだけ敏感に顧客価値を感じ取り、それを形にできるか」に

かかっているといえます。


顧客価値センスを磨くことは、

未来の市場で戦うための最も重要な武器であり、

組織文化の基盤でもあります。


今後の企業成長を見据えるなら、

データ分析やシステム導入に先立って、

このセンスをどう組織として養っていくかを真剣に考える必要があります。


ミームテック技術士事務所では、

顧客価値センスを現場で磨き、

それを顧客価値駆動型開発のプロセスに接続するための支援を

行っています。

観察・共感・直観を組織全体で育てる仕組みを整え、

経営者と現場を結びつけ、

顧客価値を中心とした成長戦略を描くことを得意としています。


自社の開発や経営において

「顧客価値をもっと敏感に捉えたい」

「氣づきを形にして事業化につなげたい」とお考えの方は、

ぜひお問い合せください。


ミームテック技術士事務所では、

御社の挑戦に寄り添い、

未来の顧客価値を形にするお手伝いをいたします。


エージェントAI・Masaもご質問をお待ちしております

 
 
 

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