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DXが内包する問い

〜変革ではなく、変化への備えとしての再定義〜


DXという言葉があちこちで使われ始めた頃、

私たちはその響きにどこか未来志向的な希望を感じていました。

業務が効率化され、顧客体験が向上し、

新たなビジネスモデルが次々と生まれることへの期待がこめられていたのです。


しかし現実には、多くの企業がDXの導入や推進に苦労し、

「それで結局何が変わったのか」と

自問するケースが少なくないのではないでしょうか。


別ブログ記事では、

DXとイノベーションという言葉の変遷を俯瞰的に捉え、

DXが単なる手段やツールの導入にとどまらず、

「変革の起点」として機能するにはどうすればよいのかという視点から

見直すことの重要性を述べました。


ここではそこから一歩進めて、

DXの本質を再定義するための「問い」の立て方について考えてみたいと思います。


本来の意味に立ち返ると、

DXとは単に「デジタル化」や「業務効率化」ではなく、

「デジタル技術を活用して社会や企業活動の構造そのものを変えること」です。


この定義は経済産業省の「DX推進ガイドライン」などにも明記されていますが、

実務の現場で「構造を変える」ことに着手している企業は

決して多くはありません。


なぜなのでしょうか。


それは、構造を変えるという行為には、

単なる技術の導入を超えた、組織全体の価値観や優先順位、

意思決定のフレームワークにまで踏み込む必要があるからです。


ここに、DXという言葉の“使いにくさ”と“わかりにくさ”の

根本があるように思えます。


現場では、

「とにかくAIを使いたい」「クラウドに移行したい」「IoTで管理したい」など、

技術ドリブンな動機が先行しがちなのではないでしょうか。

それ自体が間違いだとは言いませんが、

そこには「なぜそれを行うのか」「その結果として何が変わるべきなのか」という

問いが抜け落ちている場合が多く見受けられるように思います。


ここで重要なのは、DXを「課題に対する解決策」として捉えるのではなく、

「問いを立て直すための契機」として捉えることです。

DXは「何を変えるか」ではなく「何に気づき直すか」を問う活動なのです。


たとえば、顧客接点のデジタル化を進める場合、

単なるチャットボットの導入、Webフォームの改善は、DXではありません。

この場合の本質的な問いは、

たとえば、「私たちの顧客との関係はどのように築かれているのか」

「顧客は何を期待し、何に不満を抱いているのか」という

関係性への再認識にあります。


このような問いの立て直しを可能にするためには、

現場の実感や対話が欠かせません。


経営層がトップダウンで戦略を描き、

現場がボトムアップで知見を蓄積し、

それが双方向に循環するような組織構造が求められます。


つまり、DXとは“制度としての改革”ではなく、

“関係性としての再構築”でもあるのです。


加えて、時間軸の視点も欠かせません。


DXを「2025年の崖」に間に合わせるべきタスクと捉えるのではなく、

5年後、10年後の事業や社会にどのような兆しや変化が現れるかを想像しながら、

「今、どんな土壌を耕しておくべきか」という思考が必要になります。


変化に備えるとは、

すでにある変化の兆候を受け止める感受性を持ち、

行動に変換することでもあります。


このように考えると、

DXとは「変化を起こすためのプロジェクト」ではなく、

「変化に気づくためのプロセス」として捉え直すことが

できるのではないでしょうか。


ここには、技術や制度の話ではなく、

「観察力」や「問いのデザイン力」といった、

より人間的で創造的な要素が関与してきます。


現在のように変化のスピードと複雑さが増している社会においては、

「変化に柔軟に対応できる組織」よりも、

「変化をいち早く”意味づけ”できる組織」が

競争優位性を持つようになると考えます。


意味づけとは、単に変化を解釈するだけでなく、

それを自分たちの行動原理や価値観にどのように位置づけ直すかという、

より深い営みです。

DXは、その営みを支えるレンズであり、コンパスであるべきなのです。


私たちは今、技術に振り回されるのではなく、

技術を通して自らを再定義することが必要なフェーズにいます。


DXを推進するとは、技術を導入することではなく、

技術が照らす「私たちの見えていなかった課題」や

「顧客との関係性」そして「自社の存在意義」に向き合うことでもあります。


DXとは手段ではなく、

「問い直しの方法」であり、「変化の観測装置」として機能すべきなのです。


御社と御社を取り巻く社会を「システム」として見渡すことができれば、

イノベーションもDXも「操作すべきテクノロジー」ととらえるではなく、

「御社と社会における新しい関係性の構築」へと変わっていくでしょう。

そのことは、変革という活動をもっと構造的に捉えることにも繋がると考えます。


ミームテック技術士事務所は、

システム思考やステークホルダー分析をベースに、

イノベーションとDXを「全体最適」の視点からご支援しています。


関係性の再構築や構造的な対話の設計を通じて、

中小企業の持続的な変革と価値創造に寄り添います。

こうした変化の兆しを見極め、企業ごとの問いを可視化し、

次の一歩を共に構想するお手伝いをしています。


DX相談室では、無料でのご相談を受け付けております。

御社の思い・ご状況・これからを、お話いただけますと嬉しいです。


お氣軽にお問い合せください。

 
 
 

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