AIセンスと設計思考の融合
- 価値創造_室橋雅彦
- 8月22日
- 読了時間: 3分
〜顧客価値を軸にした開発の再構築〜
生成AIの活用が一般化する中で、
生成AIで「何がつくれるか」ではなく「何のためにつくるのか」が、
これまで以上に問われるようになっています。
中小企業においても、製品開発やサービス設計の現場で、
従来の機能・性能中心の発想から脱却し、
「顧客価値」を出発点にした思考への転換が求められています。
この文脈で注目したいのが、AIセンスと設計思考の融合です。
両者を掛け合わせることで、
開発の方向性や議論の質を一段と高めることができるのです。
設計思考は、
ユーザー視点からの課題発見と、迅速な仮説検証による価値創出を重視します。
一方、生成AIは、
発想支援や情報整理、仮説展開などの場面で強力な補助機能を発揮します。
これらを組み合わせると、
たとえば「潜在ニーズを探る顧客インタビューの問いづくり」
「コンセプトスケッチの初期案提示」
「ユーザー視点からの課題マップ作成」などにおいて、
生成AIが共創パートナーとして機能する場面が広がります。
特に重要なのは、
設計思考の中核にある「発散と収束のバランス」における生成AIの活用です。
発散フェーズでは、AIにより多様な視点や解釈を生成させることで、
自分たちの思考の枠を超えたインスピレーションを得ることができます。
一方、収束フェーズでは、
生成された選択肢を整理・分類し、評価軸に沿った比較を
AIに支援させることで、意思決定のスピードと精度を向上させられます。
ここでも求められるのは、生成AIの出力をそのまま受け入れるのではなく、
「どの視点を重視すべきか」「なぜその選択が意味を持つのか」を
判断する人間側のセンスです。
顧客価値駆動型開発プロセスでの
新商品企画アイデアの顧客価値を検証するために
生成AIを用いて、顧客セグメント、顧客の課題・ニーズ(Pain & Gain)、
提供する価値から様々な仮説を引き出し、その検証を行うことで
顧客視点に立った、設計者が求める設計要件を抽出する試みを
進めることができます。
生成AIは、過去の顧客レビューやSNSの投稿から傾向を抽出し、
見落とされがちな価値観や使用シーンを浮かび上がらせます。
それを起点に設計者同士が対話し、製品コンセプトを再構築するプロセスは、
まさにAIセンスと設計思考の実践融合といえるでしょう。
ここで改めて指摘したいことは、
AIは「設計の自動化」を目指すものではないということです。
むしろ、「価値ある設計判断を支援する共創者」として、
開発の思考を加速させる存在ということです。
重要なのは、設計の中に「問い」を仕込み、
その問いをAIとの対話で深める習慣を
設計のプロセスとプロセスに関わる人々に根づかせることです。
多くの関係者が参加して、様々な観点から設計内容とそのリスクを共有する
設計レビューや仕様検討会といった場面で、
AIに仮説を出力させ、それに対して人が
「なるほど」「いや、それは違う」と反応し、議論するプロセスが、
設計と設計者の質を高めていくと考えます。
今後、顧客価値駆動型開発において、
AIを活用する企業とそうでない企業の差はますます広がっていくでしょう。
AIセンスとは、単にツールを使う技術ではなく、
「顧客との共感を設計に翻訳する力」として、ますます重要になっていくのです。
ミームテック技術士事務所では、
単に生成AIを導入するだけでなく、
御社の顧客価値創造プロセスに落とし込む支援を行っております。
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